2022年度 第3期

概要

展示室1 「雪国をえがく―栢森義・小島丹漾・富岡惣一郎 三人展」

のびやかな筆のタッチで雪国の幻想を描いた洋画家・栢森義(1901~1992)、雪国の生活を主題に堅固な造形性を追求した日本画家・小島丹漾(1902~1975)、自ら創案した白の絵肌「トミオカホワイト」で知られる洋画家・富岡惣一郎(1922~1994)。県人作家による三者三様の表現をご覧ください。

栢森義《夜の徘徊者と雪女》1977年

栢森 義(1901~1992) ※没後30年
現在の加茂市に生まれる。本名は政義。県立三条中学校卒業後上京、本郷洋画研究所に入り、岡田三郎助の指導を受けた。帝展、文展、光風会展等に出品、1932年《食後》で光風会賞を受賞。1956年新世紀美術協会の創立に参加、以後同展に出品を重ねた。

 

ミステリアス!「雪女」シリーズ
洋画家・栢森義が生まれ育った加茂の町には織物工場が多くあり、そこに働く女工たちへの憧れや、母親へのイメージも重なって生まれたのが、晩年の「雪女」シリーズです。戦前に写実的作風から出発した画家は、次第に自由奔放な作風へ転じ、謎めいた存在・雪女をめぐる幻想を詩情豊かに描き出しました。

 

 

小島丹漾《河口暮色》1956年

小島 丹漾(1902~1975) ※生誕120年
新潟市に生まれる。本名は泰吉。大智勝観に師事し、勝観没後は奥村土牛の指導をうけた。1929年再興日本美術院に初入選後同展に出品を続け、奨励賞を数多く受賞。1974年同人に推挙されたが翌年急逝した。

 

本画と小下絵
日本画家・小島丹漾は県内各地に暮らす人々の生活を主題に、堅固な造形性を追い求め、太い線が交錯する独自の様式に到達しました。今回は当館所蔵の《河口暮色》、《待つ》(いずれも院展出品作)とともに、遺族から寄贈を受けた「小下絵」(完成作品の構図を検討した小規模の下絵)を多数展示し、丹漾の制作の秘密に迫ります。

 

 

富岡惣一郎《雪国》1971年

富岡 惣一郎(1922~1994) ※生誕100年
現在の上越市に生まれる。新制作協会展に出品し、新作家賞、新制作協会賞を受賞、会員となる。サンパウロ国際ビエンナーレ展での受賞後、1965年からニューヨークに居住し画業を深める。1972年帰国後は、国内外各地をヘリコプターやセスナ機で旺盛に取材し、個展を通して作品を発表した。

 

トミオカが探し求めた雪国の美
県内でもとりわけ雪深い上越高田に生まれた洋画家・富岡惣一郎は、自ら創案した白の絵具「トミオカ・ホワイト」を用い、「白の世界」をテーマに創作を続けました。1960年代の抽象的作品には既に雪のイメージが内包され、1970年代の《雪国》シリーズにおいて画家の独創性はいっそう明確なものとなります。今回は1960~80年代の作品をまとめて展示し、その軌跡をたどります。

 

展示室2 「幻想世界 シュルレアリスムと美術」

同時期開催の企画展「ダリ版画展」に関連し、当館所蔵のシュルレアリスム作品や、シュルレアリスムの影響を受けたと思われる幻想的な作品を集めて展示します。

【主な展示作品】

難波田龍起《森の詩》1960年

   

富樫寅平《街》1930年代

   

平澤熊一《長岡》1940年頃

   

森川ユキエ《這》1959年

   

瑛久《森の太陽》1956年  (前期展示)

 

   

【展示のみどころ】

シュルレアリスム美術を満喫する

シュルレアリスムは、1920年代のパリで誕生し、やがて国際的な運動へと発展していきました。スペイン出身の芸術家ミロの連作版画《太陽の賛歌》では、太陽や月など、カタルーニャの歴史や風土と深く結びついた要素が、色彩豊かに描き出されています。ドイツ出身のエルンストのブロンズ彫刻《鳥=人頭》は横から見ると魚、前から見ると鳥というダブルイメージがまさに「超現実主義的」です。シュルレアリスムの魅力をぜひご堪能ください。

 

日本のシュルレアリスム

昭和初期の日本は、実はシュルレアリスム大国でした。いかなる先入観にも束縛されない自由な表現の場をもとめて、数多くの前衛グループが結成されました。理知的なセンスに溢れた吉原治良の《静物》や新潟出身の富樫寅平による抒情性豊かな《街》など、戦前の若者たちが青春を賭けた前衛美術を知る得難い機会です。来日した詩人ジャン・コクトーが鑑賞したシュルレアリスムのグループ展「表現」の出品作も今回の特集で初公開しています。

 

シュルレアリスムの果てしない挑戦

どこか非現実的な状況や様子を表す時、私たちは「シュール」という言葉を現在でも使います。シュルレアリスムは形を変え、今もなお生きつづけています。特集の最後のコーナーでは、岡本太郎や桂ゆき、宮城輝夫など、戦前シュルレアリストとして活躍した作家たちによる戦後の代表作をご紹介します。一点一点の作品から、人間の魂をさまざまな偏見や抑圧から解放するというシュルレアリスムの挑戦の跡が浮かび上がってくることでしょう。

 

 

展示室3 「近代美術館の名品」

当館の名品を展示紹介します。

小山正太郎《仙台の桜》1881年

地元新潟県長岡市出身の小山正太郎は、明治9年(1796)に工部美術学校に入学し、フォンタネージの指導を受け、22年には画塾不同舎を主宰し、多くの門弟を育てました。遠近感がある構図と落ち着いた深みのある抒情的な画風は、フォンタネージの自然主義的な画風を忠実に継承したもので、小山正太郎の代表作です。

 
 

ジェームズ・ティソ《夏の夕べ》1882年

 

この作品が制作された1882年に、ティソは最愛の恋人を失っています。その女性キャスリーン・ニュートンは、しばしばティソのモデルなどを務めていました。本作は1882年制作となっていますが、画面左下には“1881”という年記が刷られています。この作品のモデルを病床にあった彼女の肖像と推定することも可能でしょう。

 

 

 

ジェームズ・アボット・マクニール・ホイッスラー《ロンドンのオールド・バターシー橋》1879年

 

画面の左右を大きく橋が横切り、その下から遠景を眺望する大胆な構図は、ホイッスラーが北斎や広重の木版画の影響を受けていることを示しています。日本的な空間構成を自分のものとし、高いレベルで西洋の技法と統合しています。

 

 


会期中展示替えがあります[前期:~11月20日(日)、後期:11月22日(火)~]

※画面上部の画像:富岡惣一郎《雪国》1971年(「雪国を描く―栢森義・小島丹漾・富岡惣一郎 三人展」より)

出品リスト(前期)284KB

出品リスト(後期)282KB

基本情報

会期

2022年10月04日(火) ~ 2023年01月09日(月)

開催時間

9:00~17:00
券売は16:30まで

休館日

10月11日(火)、17日(月)、24日(月)、31日(月)、11月7日(月)、14日(月)、21日(月)、28日(月)、12月5日(月)、12日(月)、19日(月)、26日(月)~2023年1月3日(火)

観覧料

一般430円(340円)
大学・高校生200円(160円)
※中学生以下無料

会場

新潟県立近代美術館
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