学芸員コラム⑪ 動物と人間

2022年08月10日

 15年くらい前に北海道の旭山動物園に行ったことがある。ペンギン、カピバラ、オランウータンなどをのんびりと見て回り、ヒグマの飼育ケースの前を通りかかった時に一頭のヒグマと目が合ったと思った次の瞬間ヒグマが突進してきた。ケースのガラスにドゴンとぶつかって別方向に去って行ったのだが、小型車くらいの大きさのヒグマが自分に向かってくるのを呆然と見ることしかできず、全く身動きできなかった。これが山だったらと思うと冷や汗が出たのを覚えている。
 今、館では「三沢厚彦展 ANIMALS IN NAGAOKA」が開催されている。実在する動物から伝説上の生き物まで多くの動物が展示されている。その中にクマが展示されているエリアがあり、白いクマ、ツキノワのあるクマ、茶色のクマが立ち上がっていたり転がっていたりしており、壁にはクマの絵がかかっている。それらのクマの爪の大きさ、牙の鋭さについつい見入ってしまうとともに、表情に愛嬌を感じてしまい、ちょっとくらいなら襲われてもいいかなどと不謹慎なことも思わせられた。
 人類と動物はある時は闘い、ある時は捕食したりされたり、ある時は共同に暮らすなど大きな関わりを持って来た。現代の生活では加工された食材や愛玩動物として関わることが多く、動物に対する恐れや尊敬というものは薄れつつある。
 今回の展覧会で鎮座しているANIMALSは、人類が原始より動物に対し抱いていたであろう、こわい、かわいい、かっこいい、おいしそう、つかまえたい、飼ってみたい、などのいろいろな感情を思い起こさせてくれる。足を運ぶたびにANIMALSが違う姿を見せてくれるので、毎日会場に行っているのである。

                            ( 館長 遠藤 聡 )