学芸日誌⑦ 保育園でのワークショップ

2019年01月18日

休館中、出前講座を重点的に行っています。平成30年度は、12月までに、15件38コマの授業が実施されました。もちろん、一方的に押しかけていくわけにはいきませんので、依頼があったら依頼元の希望に合わせてプログラムを組み、実施するのです。一般(公民館など)からの依頼は、残念ながらあまりなく、殆どが学校等からの依頼です。小中学校では「対話型鑑賞」とキャリア教育に関わる「学芸員のお仕事」が主な内容となっています。しかし、それよりも、幼稚園・保育園向けの出前講座「たのしい かたちを ならべてみよう」が面白いのです。もちろん鑑賞活動も含みます。

そもそも「幼児に鑑賞などできるはずがない」と思っている人は多いようなのです。けれど「いや、そんなことはないでしょう」と筆者は思います。幼児だって考えながら見る、あるいは見ながら考えることは可能なはず。作品を〈みる〉ことからつなげて、子どもたちの中に潜む造形感覚や色彩感覚の体感的な活性化をはかることが可能なのではないかと思い、このプログラムを考えたのです。

当館の所蔵品であるジョゼッペ・カポグロッシの作品画像の鑑賞からスタート。カポグロッシの作品には、彼のトレードマークともいえる半円形の櫛のような形が、色や配置を変えて繰り返し登場します。いくつもの作品画像を見ながら、みんなでおしゃべり。その後は、地元の紙器製造会社からいただいた廃材の段ボールチップに色をつけたものを並べて遊びます。

この段ボールチップも、ちょっと不思議な形をしています。一つだけで見ると、「風船」、「爆弾」、「おさかな」、「おなら!」二個セットにすると、「メガネ」、「トレーニングするやつ(鉄アレイのこと)」、などなど、空想は膨らんでいきます。たくさん並べると、さらに想像力は広がり、「花火を作ろう!」「いけすにおさかながいっぱい泳いでいるの」「迷路にしよう」など、いろいろな形が広がっていきます。

〈並べる〉というのはとても単純な行為ですが、この単純な行為が、子どもたちにはずいぶん新鮮に感じられたようです。一つの形を複数並べることによって、一つの時とは別の意味が生まれてくる魅力。そして、どんどん広がっていく世界。

気になるのは、子どもたちの発想が、ちょっぴり型にはまりがちになっていることでしょうか。

できれば、休館期間が終わった後も、このような活動を通じて、子どもたちの様子を見てみたいものです。

(学芸課長代理 宮下 東子)