学芸日誌⑬ 各地で活躍する作品たち~作品貸出歴

2019年06月21日

 当館の所蔵作品は、現在6,000点以上を数えます。それらのデータを当館ではファイルメーカーというデータベースソフトで管理しています。作品に関するところでは、作家、制作年、技法、サイズ、形状、初出展等…。他にも、画像の有無や、修復歴、過去の作品解説文…等など…。このような作品にまつわるあらゆるデータを集約し、職員がデータベース上で閲覧・検索ができるようにしています。

職員用の作品データベース

 他館への作品貸出歴データもそのひとつです。

 美術館で開かれる展覧会は主に「コレクション展」、「企画展」の二つからなります(前者は常設展や所蔵品展、後者は特別展といった名前で呼ばれることも)。コレクション展は、所蔵作品で構成される展覧会で、各館の特徴を垣間見ることができます。企画展の場合、多くは他館や個人からお借りした作品で構成されます。出品リストを見ると、「〇〇美術館蔵」等と記載があるものがそうです。当館で企画展を開催する場合、同様に作品を各所からお借りしますが、逆に要望があった美術館等に、作品の貸出しもしています。

 当館では、年度によって数は大きく変わりますが、近年だと年に平均約60点の作品を、他館へと貸出しています。今回は、休館中の時間を使って、年度ごとにまとめている貸出歴の入力作業を行いました。今まで一部を紙媒体で確認していた貸出歴が、全てデータベース上で閲覧・検索できるようになり、大変便利になりました。

 例えば、藤田嗣治の《私の夢》。どの館のどの展覧会に貸出したかが、データベース上だと一目でわかります。また、年度で検索すれば、どの年度にどの作品を貸出したか、一覧表示することもできます。

《私の夢》近年の貸出歴一覧

 作品を貸出するときは、所蔵作品がしばし館を離れることになり、一抹の寂しさを感じます。ですが、各地の意義深い展覧会で活躍した作品は、戻ってくるとどこか誇らしげに見えるような…。貸出歴は作品が歩んだ活躍の歴史そのもの。今回の入力作業でそんなことを思い浮かべました。  (主任学芸員・伊澤朋美)