学芸日誌⑪ 《私の夢》パリヘ

2019年04月19日

藤田嗣治《私の夢》が、フランスのパリ日本文化会館で開催された「藤田嗣治:生涯の作品(1886-1968)」展に出品されました。展覧会終了に伴い、当館の大切な作品の帰国のため、パリへ行ってきました。

 展覧会は、昨年東京と京都で開催された大規模な回顧展を再編集、日本国内の所蔵品を中心に選ばれた36点の作品により生涯を辿る内容で、意外なことに、藤田にとってフランスでは初となる本格的な回顧展でした。戦争記録画が海外の美術館で初めて展示されたことでも注目を集めた中、《私の夢》は、その戦争記録画の横に並べられ、会期中、約43,000人もの方々にご覧いただくことができました。

 この展覧会終了に伴う私の仕事は、この作品をパリから日本へ持ち帰ってくることでした。作品が安全に取り扱われるよう、フランスの会場であるパリ日本文化会館から日本国内の保管場所まで常に作品と一緒に行動し、作業に立ち会いました。フランスと日本、それぞれのやり方に多少のちがいはありましたが、作品を丁寧に、そして慎重に扱う点は同じです。こうして《私の夢》は無事に日本に帰国、9月の再開館にあわせて、長岡に帰ってくる予定です。

 最後に、パリでは夜間開館を行っている美術館も多く、滞在中に見ることのできた展覧会を一つご紹介します。リュクサンブール美術館で開催中の「ナビ派の装飾」展です。ここでは、念願だったポール=エリー・ランソンの壁画を見ることができました。これは日本美術を扱っていた画商ビングの店の食堂を飾っていた壁画で、このうちの1点が当館のコレクションに入っています。残りはすべてサンジェルマン=アン=レーのモーリス・ドニ美術館にあるのですが、今回、これらがすべて展示されていたのです!オルセー美術館でもナビ派に関する展覧会が開催中で、同時期に異なる切り口でナビ派を検証する展覧会が見られることもあってか、どちらの展覧会も会場内は大混雑でした。フランスでのナビ派への関心の高まりを肌で感じる体験でした。

(美術学芸員 松本奈穂子)

藤田展が開催されていたパリ日本文化会館。

   

丁寧に梱包していきます。

作品が入ったクレートを慎重に会場から搬出。

 

リュクサンブール美術館外観。チケットを買うための列が外にもできていました。

ランソンの展示風景。食堂の壁面が再現されています。人がいなくなる瞬間を待って1枚。