学芸日誌⑩ 調査・研究活動:デザイナー亀倉雄策 資料整理

2019年03月22日

 当館の休館に伴い,新潟県出身のデザイナー,亀倉雄策に関する資料の整理を進めています。これも学芸員として大切な仕事の一つです。

 亀倉雄策(1915-1997)は新潟県西蒲原郡旧吉田町(現在の燕市)に生まれました。昭和39年(1964)の東京オリンピックのポスターやNTTのマーク,昭和45年(1970)の大阪万博のポスターなどを手掛けた戦後日本のグラフィックデザイン界を代表するデザイナーです。当館にはパッケージデザイン,ポスター,ロゴマークに関するスケッチを始め,膨大な数の資料が寄贈されており,これらの資料の整理を進めています。一つの収納箱に,多い時には800点以上の資料が入っていることがあります。収納箱は資料保管室に80個以上あり,少なく見積もっても2万点以上の資料が保管されているようです。

 作業手順は以下の通りです。最初に,資料を汚さないよう白手袋を着けて一つ一つ丁寧に資料を調査台に広げます。次に写真を撮り,メジャーで縦,横の寸法を測り,分かり易いタイトルを付けます。最後にそれらのすべてをパソコンに入力し,データベース化を進めています。非常に地味で,根気のいる作業です。

 資料を一つ一つ手に取ると,亀倉氏の緻密な仕事ぶりに圧倒されます。雑誌のタイトルや社名等の様々なデザインを創り出していますが,形や字体,字の大きさ,線の太さ,レイアウト等は多岐にわたります。たった一つの完成品を世におくり出すために,何十通りも試行錯誤を繰り返していることが分かります。妥協を許さない,仕事に対する強い情熱を感じます。

 また,外国雑誌等の切り抜きばかりを集めた収納箱もいくつかあります。日本にまだ「グラフィックデザイン」という言葉が浸透していなかった時代に,亀倉氏はこれらの資料を足掛かりにして,新しい分野を開拓してきたのだなあ,と思いを馳せています。

 いつの日か亀倉氏の研究に役立つ日のために,地道な作業を一つ一つ着実に進めていきたいと思います。(学芸課副参事・山本未知雄)