2025年05月10日
企画展「安野先生のふしぎな学校」が開催中です。(令和7年6月1日まで) 安野先生こと、画家 安野光雅(1926-2020)は、生涯150冊あまりの絵本を生み出しました。安野は、日本や世界各国さまざまな場所で風景を描き、本の装丁を手掛け、テレビやラジオで語り、エッセイストとしても活躍しました。本展は、安野光雅が画家として独立する前の教員時代に着目し、津和野町立安野光雅美術館所蔵の多彩なジャンルの作品を学校の授業科目に見立てて紹介する展覧会です。
展示は、“朝の会”から“終わりの会”まで(プロローグや自由研究もあります)、国語や算数、理科に社会、英語に図工・音楽という、授業科目の名称で章立てた“学校の時間割”を楽しめる構成にしています。国語の章では、ふしぎな物語を読んだり、いろはかるたを楽しんだり、算数の章では、数をかぞえたり、おかしな足し算を楽しんだり、図形について考えたりします。作品を鑑賞しながら、同時に気づくことや楽しむことで学びを深めることができる内容となっています。絵を見て、「この絵は何か変だな」「あ、○○が描かれていたんだ」「とてもすてきだな」と感じるたびに、きっと、ふしぎな学校での学びが深まっていくことでしょう。
安野は初めてヨーロッパ旅行に行ったときに出会った青年の「学びはインポータントではないんだよ、インタレストなんだよ」という言葉に衝撃を受けます。自分の頭で考え、その興味を抱く気持ちが大切だということを後代へのメッセージとして繰り返し伝えてきた安野。ふしぎな学校では、見る人がそれぞれのインタレストの種を探すことを鑑賞のテーマにしています。そのテーマに近づけるよう会場内にはインタレストの種を探すお手伝いとして“プチ体験コーナー”がいくつか設置してあります。『もりのえほん』(1977年 福音館書店)や『蚤の市』(1983年 童話屋)の拡大パネルを使った絵探しや『はじめてであうすうがくの絵本3』(1982年 福音館書店)から出題した一筆描きあそび、絵本コーナーや折り紙本づくりなどに触れることで、作品鑑賞をより楽しむことができるようになっています。インタレストの種を探すことや、何かを感じようと意識することで、きっと作品鑑賞が学びへと繋がっていくはずです。ちなみに、社会の章には、安野が旅先で描いた数々の風景画が展示されています。その中の一枚に長岡の風景を描いた作品《新潟県長岡市・悠久山》(『週刊 司馬遼太郎Ⅱ』2007年 朝日新聞出版)がありますので、会場に足を運んだ人が安野とのちょっとした繋がりを感じることができれば、それもインタレストの種になることでしょう。
「安野先生のふしぎな学校」でのすてきな学びを、たくさんの子どもたちに、そして、子どもだった大人の方々に味わっていただければ幸いです。(副参事 上雅次)