概要

モーリス・ドニ（1870-1943）は19世紀末フランスで、次世代への橋渡しとして、かけがえのない役割を担った前衛グループ「ナビ派」（ヘブライ語で「預言者」の意）の中心人物でした。セリュジエやボナール、ランソンらとともに、絵画の枠を超え、建築、演劇、文学、音楽などと結びつくような創作活動を実践しました。優れた批評家でもあり、造形と文筆の両輪で近代西洋美術史に足跡を残しました。ドニやナビ派の影響は遠く日本にも及びました。「ナビ派の学校」であるアカデミー・ランソンで、梅原龍三郎のように直接指導を受けた日本人画学生もいました。本展ではドニの生涯を国内の名品を通して展観します。そして、それぞれの時期に彼と日本の美術がどのように関わってきたのか、黒田清輝が目にしたであろう初期作品から、ドニに学んだ留学生たちの作品、早くから来日して日本で展示された作品を振り返ることで辿ります。
 本展は、ナビ派の収集で知られる新潟県立近代美術館と日本洋画研究に力を入れている久留米市美術館の共同企画。２会場のみの開催です。モーリス・ドニと日本に焦点を当てた展覧会は国内で初めての試みです。

[主催]新潟県立近代美術館　[共催]新潟日報社　[協力]新潟県立近代美術館友の会　[後援]新潟県教育委員会、長岡市、長岡市教育委員会、長岡新聞社、FM新潟77.5、FMながおか80.7、新潟・フランス協会　[助成]公益財団法人 野村財団

展覧会の見どころ
① ドニと同時代日本人たちの運命的な出会い
② ドニたちの夢の学校、アカデミー・ランソン
③ ドニ畢生(ひっせい)の大作《バッカス祭》、ついに国内そろい踏み

主要展示作品

モーリス・ドニ《ベンガル虎 バッカス祭》1920年 新潟県立近代美術館・万代島美術館

モーリス・ドニ《バッカス祭》1920年 石橋財団アーティゾン美術館

ピエール・ボナール《子供と猫》1906年頃 愛知県美術館

アリスティド・マイヨール《山羊飼いの娘》1890年頃 岐阜県美術館

モーリス・ドニ《夕映えの中のマルト(マルト・サンボリスト)》1892年 新潟県立近代美術館・万代島美術館

ポール＝エリー・ランソン《収穫する７人の女性》1895年 新潟県立近代美術館・万代島美術館

モーリス・ドニ《若い母》1919年　国立西洋美術館蔵 松方コレクション

小柴錦侍《卒世やさしいサンタマリア》1926年 一般社団法人如水会　

モーリス・ドニ《聖母月》1907年 ヤマザキマザック美術館

モーリス・ドニ《アルミ―ドの園》1907年 富士屋ホテル

  第１章
ジャポニスムの申し子｜「ナビ派」の誕生に居合わせた日本人
日本趣味が流行していた19世紀末のパリ。ドニやボナールら若い芸術家によってグループ「ナビ派」が結成されました。平坦な色面や装飾性、大胆な構図は、次の時代の絵画を予告するものでした。象徴主義の作家たちなどナビ派の関連作家たちや、同じ時代のパリにいてナビ派のデビューを目撃した画学生・黒田清輝らの作品も併せて紹介します。

第２章
アカデミー・ランソン｜パリの画学生～明治・大正・昭和
美術が大きく変化していく傍ら、ドニも「絵画とは何か」について思索を深めながら創作を続けました。1908年に開校したナビ派の学校アカデミー・ランソンでは仲間たちとともに、教壇に立って後進を指導しました。そこでは梅原龍三郎や足立源一郎ら多くの日本人画学生が籍を置き、直接ドニの指導を受ける者もいました。

第３章
宗教芸術家として｜そして彼の絵は海を渡る
生涯を通じて敬虔なカトリックだったドニは、第一次大戦後の1919年にアトリエ・ダール・サクレを設立し、宗教画の復興を目指しました。また壁画装飾など公共の仕事にも精力的に取り組みました。この頃、日本人コレクターによってドニの作品が収集愛好されるようになり、1920年代には日本で実際にドニの作品が展示されました。

関連イベント

講演会「憧憬から現実へ　— 日本人とモーリス・ドニ」
講師：佐々木奈美子氏（久留米市美術館学芸課長）
日時：8月31日（土）14:00～15:30
会場：当館講堂　定員：165名（先着）/ 申込不要 / 参加無料

美術鑑賞講座「モーリス・ドニの日本イメージ　— 魂の故郷へ」
講師：平石昌子（当館専門学芸員）
日時：9月28日（土）14:00～15:30
会場：当館講堂　定員：165名（先着）/ 申込不要 / 参加無料

映画鑑賞会「カラミティ」
（2020年、レミ・シャイエ監督、フランス・デンマーク映画、82分）
日時：9月22日（日・祝）14:00～
会場：当館講堂　定員：165名（先着）/ 申込不要 / 参加無料

学芸員によるギャラリートーク
①9月15日（日）14:00～　/　②10月13日（日）14:00～
会場：企画展示室　 申込不要 / 要観覧券

親子でアート！親子ふれあいデー
①9月14日（土）　/　②10月13日（日）
「おしゃべりタイム」をドニ展も実施します。
展示室内で声の大きさを気にせず鑑賞をお楽しみいただける日です。
小さなお子さま連れでも気兼ねなくご来館ください。
＊通常の開館日のお客様同士の会話を制限するものではありません。

チラシ・プレスリリース・出品リスト（PDF）
チラシ(611㎅)　・　プレスリリース(361㎅)　・　出品リスト(1.08M)

図録「日本が見たドニ｜ドニの見た日本」

本展覧会図録(208ﾍﾟｰｼﾞ、全作品カラー掲載)を券売にて販売しています。
税込2,500円