美術の鑑賞、特に美術館でのそれは、状況にもよるでしょうが、子どもたちにとって、少し退屈なことがあるかもしれません。なぜなら、たいていの展覧会は大人を対象に「みる」行為を中心に構成されており、何事も体験しながら吸収していく子どもたちにとって、美術鑑賞は受け身になりがちであるからです。とはいえ、子どもたちにも、「みる」ことを積極的に楽しむ力は備わっているはずです。それをうまく引き出し、子どもたちが積極的に美術作品と関わることによって、豊かな心と想像力を養うきっかけとなることができたら、それは私たちにとって大きな喜びです。本展では、美術作品に内在する内面的なものを取りあげました。大人にくらべて人生経験の浅い子どもたちにとって、作品の精神等を感じ取ることは、少々難しいところがあるかもしれません。しかしその一方、先入観がなく直感力に優れた子どもたちは、大人よりも敏感に表情や形を捉える力を持ち合わせているようにも思われます。そこで、無理なく作品の内面世界に入っていくことができるよう、内容を4部門に分け、インパクトのある楽しい作品からスタートし、しだいに複雑な心や精神の表現の見られる作品へと、段階を踏んだ構成としました。作品に手を触れることはできませんが、そのかわり、会場内には、子どもたちが自ら手を出して様々な表情を体験できる遊具も用意しています。展示作品には、絵画や彫刻だけでなく、伝統芸能からイラストレーションまで様々な分野が含まれていますが、題材の中心は人間です。お子さんと共にご来館される方には、ぜひ、ご一緒にお話をしながら、人間のココロを想像していただけたらと思います。