麻田鷹司は1928(昭和3)年に京都に生まれ、創画会を中心に作品を発表し、1967年には法隆寺金堂壁画再現事業に参加するなど、戦後日本画界を代表する画家として活躍しました。初期から一貫して日本の風景を描き続けましたが、特に那智の滝や佐渡、厳島、松島など古くから繰り返し描かれてきたいわゆる「名所」を題材にした数多くの作品を残しました。大勢の人々の心を捉えてきた場所の持つ霊的な力に強く惹かれたからです。その後には嵐山、嵯峨野、清水などの京都の風景が大きなテーマとなります。京都の自然は人々が長い時間をかけて培い、守ってきたものであり、人と風景との関わりを描こうとする画家にとっては絶好の題材となりました。本展は1987年に急逝した麻田鷹司の初期から晩年まで、約40年間の画業を見渡す、没後はじめての本格的な回顧展です。戦後の日本画界において、日本の風景という題材に正面から取り組み、「現代の風景画」を独自の技法で創り上げた麻田鷹司の作品をぜひこの機会に御覧ください。