今日、絵本は子どもたちだけではなく、世代をこえて広く多くの人々に親しまれています。何枚もの絵で紡いだ絵本は、文字を読まなくても物語の流れを伝えてくれます。優れた画家が描いた絵本の絵は、生き生きと動き出し、言葉よりもっと豊かに物語を語ります。絵は理屈を超えて私たちの心に直接語りかけるのでしょう。日本の絵本の歴史をさかのぼると、ヨーロッパで絵本の歴史が始まる17世紀後半よりずっと前、12世紀の平安時代には成立していた絵巻にたどりつきます。絵巻は、当時盛んになった物語文学と結びつき、手で繰り広げながら見る長大な横画面を生かして独特の時間表現を生み出しました。絵巻の心は、現代の絵本にも生きています。そしてその心は、アニメーションや映画にもつながってゆきます。この展覧会では、絵巻と絵本を一緒に展示して、世界でも評価の高い日本の絵本の源流の一端を探ります。絵が語る、わくわくする物語の世界をお楽しみ下さい。