20世紀初頭は科学の進歩と工業の発達が著しい時代であり、中でもドイツのバウハウスに代表される、合理主義的・機能主義的な近代デザインは世界中に広まりました。現在、それは工業デザインとしてわれわれの周りを取り巻いています。それらは合理性に優れた形態をもち経済的でもありました。しかし、反面あまりにも規格化、画一化され、生活空間を無機的にしてしまったことも否めません。このような背景にあって、現在のヨーロッパの作家の中にはガラスや金属、木などの素材を見直し、未知の魅力を引き出そうとする動きが起こっています。彼らの中には素材から伝統的なイメージを払拭しようとし、また自らが体験した地域文化をよりどころに素材に新たなイメージを与えようとしています。そして、従来には見られない斬新で、芸術性豊かな作品を生みだしています。本展は機能性追求のために見過ごされてきた人と素材の関わりを、再び取り戻そうとするヨーロッパ12カ国、27作家の作品、約130点を紹介いたします。これらの多くは今回の展覧会のために制作されました。新世紀に向けた挑戦ともいえる作品を通して、ヨーロッパ工芸の最先端の美と思索の世界をご鑑賞ください。