2022年度 第4期

概要

展示室1 「近代美術館の名品」

当館の名品を、昨年度の新収蔵品を交えて展示紹介します。

新潟県出身工芸家二人の新収蔵作品

 

〈新収蔵作品〉佐々木象堂《鋳銅花文花瓶》大正後期

 

佐々木象堂(1882~1961)佐渡出身。

 《鋳銅花文花瓶》:近代工芸を牽引し、重要無形文化財保持者となった佐々木象堂の、鋳銅により作られた花瓶です。整然と配置された花紋は、伝統的ながらも、どこかモダニズムの風情を感じさせます。
 本作が作られたと推定される大正後期は、アール・ヌーヴォーやアール・デコといった新しい芸術思潮に感化された若い工芸家たちがモダニスムへと向かっていった時代でした。象堂も例外ではなく、新しい工芸の確立を目指していきました。

 
 

〈新収蔵作品〉目黒順三郎《彫漆丘小屏風》1950年

 

目黒順三郎(1921~2016)村上出身。

 《彫漆丘小屏風》:漆と縁深い村上に生まれ、中でも漆の層を彫り出し文様を描く彫漆の技法を追究してきた目黒順三郎。同技法で作られたこの作品は、彫漆ならではの凹凸が美しく、ネギボウズや蝶など春らしいモチーフを新鮮な感覚で構成し、モダンな屏風に仕上げています。

 

西洋美術の名品から

ポール=エリー・ランソン《収穫する7人の女性》1895年

 この作品は、アール・ヌーヴォーの発展に関わったパリの美術商S.ビングの店の一室を飾ったとされる貴重な壁画です。作者のポール=エリー・ランソン(1861~1909)は、19世紀フランスで活動した前衛グループ「ナビ派」の一員。日本美術を好んだことでも知られ、顔料と膠を混ぜた技法や、平面的な描写に日本美術からの影響が見受けられます。

 会期中に美術鑑賞講座を行います。詳しくはこちら

 

 

 

展示室2 「命脈 ―命と美のつながり」

所蔵品から、親子や兄弟の作品を選び、展示します。
作家たちは、身近な存在である家族に触発されながらも、それぞれの個性を開花させます。命と美のつながりにより作品が豊かに響き合う様子、そして新たな道を拓いていく作家の足跡をお楽しみください。

出品作家

絵 画

三輪 大次郎 三輪 晁勢 三輪 晃久

与板町出身の、京都で活躍した、いずれも色彩表現に優れた日本画家です。大次郎は小山正太郎の「不同舎」で油彩画も学びました。

三輪晃久《秋氣》2000年

 

   
大矢 紀 大矢 十四彦

同じく与板町出身の日本画一家。大矢紀の父親の大矢黄鶴も息子も日本画家です。紀と十四彦は兄弟です。
大矢紀は日本美術院の同人となっています。

大矢紀《煌》2005年

   
難波田 龍起 難波田 史男

難波田龍起は、日本の抽象美術界の先駆者、第一人者として知られています。その息子・史男は独自に内的世界を探索し注目を浴びましたが、フェリーから転落し夭折しました。

 

彫 刻

北村 四海 北村 正信

北村四海は、日本に初めて大理石彫刻を導入したことで知られています。
甥で後に養子となった正信はその技術を受け継ぎ、卓越した技量で制作しました。

北村正信《髪》1966年

   
戸張 幸男 戸張 公晴

戸張幸男と公晴は親子です。
幸男が一貫して具象彫刻を追及したのに対して、公晴は無駄のない形態の女性の胴体(トルソ)を作り続けました。

戸張公晴《TORSO》1990年頃

   

 

工 芸

宮田 藍堂(二代) 宮田 宏平(三代藍堂) 宮田 脩平 宮田 亮平

生涯佐渡で制作し続けた宮田藍堂(二代)。その子息である宏平・脩平・亮平は、東京藝術大学工芸科で学び、それぞれの分野で新しい表現を目指しました。

宮田宏平(三代藍堂)《蠟型鋳金・終わりのない物語「恋秤」》1983年

   
原 直樹 原 正樹 原 益夫

原直樹と正樹は親子、益夫もその血を引いており、柏崎の鋳物の伝統を受け継ぎつつ新しい芸術の形を追求しています。

 

展示室3 「堺時雄 ピクトリアリズムへの招待」

「ピクトリアリズム」とは、19世紀半ばのロンドンから始まった、写真の芸術性の確立をめぐる動向のことです。1919年に東京美術学校臨時写真科に入学して頭角を現し、その後志願兵となりながらも多数の芸術写真を残した堺時雄のピクトリアリズムを紹介します。

堺時雄1898-1991(明治31-平成3)
新潟市に生まれる。写真家金井弥一の三男。1913年大叔母堺イチの養子となり堺姓を名乗る。1919年東京美術学校臨時写真科に入学。1922年平和記念東京博覧会入賞。卒業時に担当教授より、助手就任を頼まれるも固辞して帰郷。12月より1年間飛行第二大隊に入隊し航空写真を撮る。1928年に主婦之友社に入社し、写真部次席を務めながら芸術写真を発表。

   

まるで絵画のような写真作品

 1889年のイギリスで提唱された「自然主義」から派生し、写真を芸術品までに高めようとする「ピクトリアリズム」。この考え方は世界各地に波及し、日本でも1915年に東京美術学校(現・東京藝術大学)に新設されたばかりの臨時写真科でも実践されました。この学科に1919年に入学したのが堺時雄でした。堺は在学中に平和記念東京博覧会(東京、上野)で入賞するなど、芸術写真の分野でめきめきと実力を発揮していきました。

堺時雄 題不明《飛び込み》1932年頃 ※映像展示

堺時雄《窓辺》あるいは《窓辺の女の子》1927年

堺時雄 題不明《婦人像 横顔》1926年

幻のガラス乾板による芸術写真を映像化し、はじめて紹介

 

 堺時雄は主婦之友社で広告写真を手掛けると同時に、芸術写真を追求する「洋々社」を設立。その過程で、ピクトリアリズムに続く、写真に手を加えない芸術写真、ストレートフォト作品も発表します。1935年には新興写真を目指す芦屋カメラクラブによる全国規模の公募展「アシヤ写真サロン」にも連続して入選するなど活躍をみせましたが、1941年に太平洋戦争に召集され、1946年に復員すると、何故か芸術写真には戻りませんでした。
 残されたガラス乾板や紙焼写真は、2004年に当館に寄贈されました。今回、幻とも称されていた、ガラス乾板による戦前の芸術写真を、はじめて映像にて紹介いたします。

堺時雄 題不明《ワーリャ・シャルフェフ》1926年頃  ※映像展示

 

堺時雄《死の花》1920年

 


会期中展示替えがあります[前期:~2月26日(日)、後期:2月28日(火)~]

※画面上部の画像:堺時雄《ソフィア(婦人像 正面)》1926年(「堺時雄 ピクトリアリズムへの招待」より)

出品リスト(前期)(377KB)

出品リスト(後期)(383KB)

基本情報

会期

2023年01月17日(火) ~ 2023年04月02日(日)

開催時間

9:00~17:00
券売は16:30まで

休館日

2023年1月23日(月)、30日(月)、2月6日(月)、13日(月)、20日(月)、27日(月)、3月6日(月)、13日(月)、20日(月)、27日(月)

観覧料

一般430円(340円)
大学・高校生200円(160円)
※中学生以下無料

会場

新潟県立近代美術館
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